会社設立後も、やらなければならないことは山ほどあります!
「会社を作る」というと、多くの方が「法務局で会社設立登記を済ませれば、それで一段落」と思われるかもしれません。
もちろん、登記を終えて法人格を取得することは、会社設立の大きな一歩です。しかし、実際にはそれで全てが完了するわけではありません。むしろ、登記後からが本格的なスタートです。
会社を設立した直後には、事業を実際に始めるために必要な各種の届け出や申請手続きが数多く存在します。これらを適切に行わなければ、税務や社会保険、労働関係などに支障をきたす恐れがあります。
たとえば、以下のような官公庁での手続きが必要になります。
・税務署税務署では、法人としての設立届出をはじめ、給与を支払う場合には源泉所得税に関する届出、また消費税や青色申告に関する申請も必要です。
・年金事務所では、法人が従業員を雇用する場合、健康保険および厚生年金の加入手続きを行う必要があります。
・労働基準監督署やハローワークでは、労働保険(労災保険・雇用保険)に関する届け出が求められます。
これらの手続きには、それぞれ異なる提出先があり、また定められた期限内に手続きを完了させる必要があるという点も非常に重要です。
提出が遅れると、罰則が科されたり、補助金の申請などに影響を与えたりする可能性もあります。
そのため、会社設立後には「もう終わった」と気を抜かずに、次に何をすべきかをきちんと整理し、スケジュールを立てて確実に手続きを進めることが大切です。
この記事では、会社設立後に必要となる一連の手続きを一覧形式でわかりやすく整理し、それぞれの手続きの意味や注意点について丁寧に解説しています。
とくに、個人事業主として事業を行っていた方が、法人成りをして会社を設立するケースでは、通常の手続きに加えて「個人事業の廃業手続き」など、追加で行わなければならないこともあります。
会社設立後に必要となる各種手続き一覧
会社の設立登記を終えると、それだけで一区切りと思いがちですが、実際には会社として事業活動を始めるにあたり、複数の官公庁に対してさまざまな届け出を行う必要があります。
それぞれの提出先や手続きの内容、期限には注意が必要です。以下に、主な届け出先ごとに必要な手続きを詳しくご紹介します。
1. 税務署への届け出(会社の設立に伴う税務関連の手続き)
会社を設立すると、法人としての税務上の処理を行うために、次のような書類を税務署へ提出する必要があります。
法人設立届出書(必須)
会社の設立を税務署に報告する基本的な書類です。設立日から2カ月以内に提出します。定款の写し、登記事項証明書などを添付する必要があります。
給与支払事務所等の開設届出書(給与を支払う場合)
役員や従業員に給与を支払う場合には、給与支払いを行う拠点の情報を届け出る必要があります。給与の支払いを開始した日から1カ月以内に提出しましょう。
源泉所得税の納期の特例申請書(任意)
給与などから源泉徴収した税金を、年2回のまとめて納付にしたい場合に提出します。提出期限の定めはなく、申請の翌月から適用されます。
消費税の新設法人届出書(資本金1,000万円以上)
資本金が1,000万円以上で設立した会社は、設立初年度から消費税課税業者になるため、速やかにこの届出書を提出する必要があります。
消費税課税事業者届出書(課税売上1,000万円超)
基準期間(前々事業年度)または特定期間(前年6カ月間)の課税売上高が1,000万円を超えた場合に提出が必要です。
青色申告の承認申請書(任意)
欠損金の繰越控除などの特典が受けられる青色申告を希望する場合は、申請が必要です。設立から3カ月以内、または第1期事業年度終了日の前日までのいずれか早い日が提出期限です。
2. 都道府県税事務所・市町村役場への届け出(地方税に関する手続き)
法人設立届出書(必須)
都道府県および市町村に法人の設立を届け出る必要があります。提出期限は原則として設立日からおおむね1カ月以内です。ただし、東京都23区では市町村への提出は不要です(都税事務所が窓口となります)。
3. 年金事務所への社会保険関連の届け出
法人が従業員を雇う場合、たとえ1人であっても、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。
新規適用届(必須)
法人として社会保険の新規加入を届け出る書類です。従業員を雇用した日から5日以内に年金事務所へ提出します。
被保険者資格取得届
雇用した従業員が社会保険に加入する対象となる場合、個別にその資格取得を届け出ます。こちらも、事実が発生した日から5日以内に提出します。
4. ハローワークへの雇用保険関連の届け出
労働者を1人でも雇用した場合は、雇用保険への加入が義務となります。以下の書類をハローワークへ提出します。
雇用保険適用事業所設置届
労働者の雇用を開始した日から10日以内に提出します。会社が雇用保険の対象事業所であることを届け出る手続きです。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用した従業員が雇用保険の対象となる場合に提出します。雇用した月の翌月10日までが期限です。
5. 労働基準監督署への手続き(労災保険など)
従業員を1人でも雇用する場合、労働基準監督署への以下の手続きも必要になります。
適用事業報告書
労働基準法の適用を受ける事業所として報告する書類です。事業開始後、速やかに提出することが求められます。
労働保険の保険関係成立届
労働保険(労災保険)の関係が発生したことを届け出る書類で、労働者の雇用開始日の翌日から10日以内が提出期限です。
概算保険料申告書
労働保険料の予想額を申告して納付するための書類で、保険関係が成立した日の翌日から50日以内に提出します。
6. 金融機関での法人口座開設
新規届出書
法人口座を開設する際には、金融機関に対して法人情報や実質的支配者の情報などを記載した届出書を提出します。これは口座開設の際に必須です。
個人事業主が法人化したときに必要な「追加の手続き」とは?
個人事業主が法人化、つまり「法人成り」をして会社を設立する場合、単に新しい会社を立ち上げるだけでなく、これまで行っていた個人事業を終了するための『廃業手続き』もあわせて行う必要があります。
これは、個人事業主としての立場から、法人(会社)という新たな形態に切り替えるという大きな転換になるため、税務や行政への正式な届け出が求められるのです。
以下に、法人成りにともない必要となる主な廃業関連の手続きをご紹介します。
税務署に提出する主な廃業関連の届け出
個人事業主から法人成りした際に税務署に提出する主な届け出について確認しましょう。
1.個人事業の廃業届出書
個人事業をやめる際に、まず最初に提出すべき届け出です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」で、税務署に対して廃業の意思を伝えるために必要です。
提出期限:廃業から1カ月以内
2.所得税の青色申告の取りやめ届出書
青色申告の承認を受けていた個人事業主は、その適用を終了するための届け出が必要です。提出しない場合、自動で白色申告扱いになる可能性があります。
提出期限:青色申告をやめる年の翌年3月15日まで
3.給与支払事務所等の廃止届出書
個人事業で従業員や家族に給与を支払っていた場合に必要です。源泉徴収義務がなくなるため、この届け出を通じて、給与支払い業務の終了を報告します。
提出期限:廃業から1カ月以内
4.消費税の事業廃止届出書
課税事業者として消費税を納めていた個人事業主は、事業の終了をもって消費税の納税義務も終了します。これを税務署に報告するために提出します。
提出期限:すみやかに提出(早めが安心)
都道府県税事務所・市町村役場に提出する書類
事業廃止届(地方税関係)
都道府県税事務所や市町村役場にも、個人事業を終了したことを報告する必要があります。法人化した場合は、別途「法人設立届出書」も提出することになります。
提出期限:廃業からおおむね1カ月以内(自治体により異なる)
いずれの手続きも「期限」が定められており、遅れると税務処理に支障をきたすことがありますので、余裕をもって準備しましょう。
会社設立後はスケジュール管理が成功のカギ!事前準備がとても大切です
会社を設立した後は、いよいよ事業のスタートですが、その前にクリアしなければならない「やるべきこと」がたくさん待ち受けています。
実際に設立登記が完了して法人として認められたとしても、それはまだ「準備段階」が終わったに過ぎません。ここからが本当の意味でのスタートラインです。
設立直後の時期には、税務署や都道府県、市町村、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなど、さまざまな官公庁への届け出や申請手続きが必要です。
提出書類の種類も多く、しかもそれぞれに提出期限が定められています。
このように複雑な手続きが多い中で、うっかり忘れてしまったり、期限を過ぎてしまったりすると、罰則や事務手続きの遅延、助成金の申請不可など、思わぬトラブルにつながりかねません。
そのため、どの書類を、どこに、いつまでに提出すべきかを事前にしっかりと把握することが非常に重要です。
とくに注意が必要なのが、「個人事業主から法人化するケース」です。
この場合、通常の法人設立手続きに加えて、個人事業の廃業に関する手続きや、青色申告の取りやめ、事業税関連の届け出など、より多くの対応が求められます。
これらも提出期限があるため、法人化の計画を立てる段階で、併せてスケジュールを組んでおくと安心です。
事前準備のポイント
・必要な届け出をリストアップし、担当官公庁を整理しておく
・提出期限をカレンダーなどに記録し、余裕を持って準備する
・書類に不備がないよう、ダブルチェックを怠らない
・忘れがちな「個人事業の廃業手続き」もスケジュールに組み込む